添加物を使わない製法(無添加)に取り組み始めたころ、昔から家庭で食べていた味にならずに悩んでいたとき、飛騨高山の おばあちゃんたち が私に言うのでした「やっぱ、木の樽で漬けた漬けもんは、美味しいぃね〜。軽くて楽なプラスチックの桶じゃ、どうしても美味しくならんのやなぁ」
この言葉が、伝統製法を見直す大きなきっかけになりました。
なぜ、木樽が
良いのでしょうか?
木樽の歴史・・・
100年以上昔のものがあります。
樽(桶)の底をみてみましょう。すると、その樽が造られたときの【年号】【誰が買ったの?】【誰が作ったの?】【何円だったの?】・・・
そんな歴史ある墨字で記されていることがあります。飛騨高山よしま農園で確認されているもので、天宝九年樽、明治二十八年樽などと確認されています。この歴史の重みが美味しい乳酸発酵の赤かぶ漬を生み出すのでしょうか。
食品添加物のなかった時代にもどることで実現した、赤かぶ漬の味の証
木桶には、ひとつひとつの個性があり、
発酵の具合も違う。
その個性をみきわめ、重石の量をすこしづつ調整する
重石も全て形と重さが違う天然石。
赤かぶ漬物を熟成させるのは、この木桶たちの仕事。
晩秋の11月にすべての樽に赤かぶが収まるころ、樽たちからポコポコと発酵音が鳴り響き始めます。まるで樽たちが喜んでいるかのようです。冬の饗宴が樽の蔵で静かにはじまります。
道具は使い続けるほど、使いやすくなり、人間になじんできます。桶も同じように、古いものほど味わいが深いようです。木桶にも心があり、対話するような感覚があります。桶ひとつひとつ、全て味が微妙に違うのも楽しみのひとつです。
1.木桶職人さんがいない!
木樽がとても良いということは、分かってきました。
しかし今、その木樽を新しく作る職人さんがいないのです!
近年、木樽は重くて扱いにくいということで嫌われ、プラスチック桶に取って代わられ、また同時に漬物を家庭で漬けるという風習が消えつつあることから漬物樽は一般家庭では不必要になってきました。
それとともに飛騨高山には古くから栄えた桶屋の仕事がなくなり、桶職人さんが姿を消し始めたのでした。
2.大切に使ってきた
木桶をあなたへ
飛騨高山よしま農園の赤かぶ漬け熟成所には木樽が60以上あります。そのほとんどは飛騨高山はじめ近隣の古い家々の方達から提供いただいたものです。
木樽桶をを譲って下さる方を友人知人から紹介して頂き、そのお宅へ行くと、いつも、その家のおばあちゃんが迎え、話はじめます。
「この桶は私が嫁にきた時に実家からもってきたのよ。実家では私の母親が大切に使ってたのよ。
その母も、姑さんから受け継いだって言ってたわ」
「この樽は思い出があってね。だけど私も歳をとってもう使わなくなったけど、捨てるのが惜しくてね。だけどあなたが使ってくれるなら桶も喜ぶわ。私の娘を嫁に出すような気分ですね」・・・
「木樽って、味が全然違うよね。昔の人はみんなこの木樽の漬物の味を知っているから、木樽の漬物って聞くと、どうしても懐かしく、食べたくなるのよね」・・・・
3.壊れかけた木樽に命を再び
木樽は1年でも使わない時期があると、木が乾燥し、箍(タガ:桶を締めている丈の輪)が外れ、水が漏れるようになってしまいます。人が使う道具は使わなければ朽ちていくのです。受け継いできた桶のほとんどが、このように朽ちはじめています。
状態良いものはそのまま使えますが、故障が激しいものは修理が必要です。
修理は飛騨高山でただ一人残る桶職人の今井桶屋のお爺さん(現在は引退)にお願いしています。
今井さんは、足腰が弱くなって大きな桶の修理はとても大変なことなのですが、無理を承知の上でいつも修理を引き受けてくださいます。
使われなくなって壊れかけた桶がよみがえるとき、「よかったな。これからこの桶がまだ100年以上働けるように大切につかうから」と桶に語りかけます。
【木桶に柿渋を塗ることで、木の腐敗防止となり、木桶の寿命が延びる】
【柿渋を塗って、美しく黒光りする木樽】
日本の良き文化。食文化の下支えをしてきたのが、樽職人さん
【木樽の底板をつくります。木をくみあわせて漏れない桶を作るのは職人技】
樽職人さんから、修理方法を伝授頂く
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